男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 そう言って、ノエルが首飾りに鼻先を近づけた。数秒ほど、しげしげと眺めて様子を確認したかと思うと、ふっと息を吹きかける。

 すると、首飾りがぼんやりと光って、ゆっくりと浮かび上がった。その場で時間をかけて一回転すると、金のネックレス部分がキラキラと光って伸びて大きくなり、ふわりと移動して、そのままノエルの頭の上から首に向かった。

 太い首に引っ掛かった首飾りが、一瞬強く輝いて、パキーンっと不思議な音を発した。そこから白銀色が弾けたように見えた時、ラビは小さな耳鳴りが頭の中に響いて、自分の耳を軽く叩いてしまっていた。

 その直後、首飾りが光りを失った。チェーン部分が魔法のように収縮し、ぴったりノエルの胸元に収まった。

「今の、何?」
『掛かっていた術を全部弾いた。ついでに、うっかり誰かが触っちまっても大丈夫なようにした』

 ノエルは簡単に答えて、付け心地を安定させるように、ぶるりと身体を揺すった。首飾りのチェーン部分が毛並みに埋もれて、残ったアメジスの宝石の装飾部分が覗く様子は、彼の黒に映えて上品さが増し、お洒落をした貴族犬みたいだった。
< 353 / 398 >

この作品をシェア

pagetop