男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
「止まった大蛇が、崩れ始めたのを見た時は、心臓が止まる想いでしたよ」
「大丈夫だよ。それに腹の中というよりは、別空間の部屋みたいなところだったというか」

 そう答えたら、セドリックがこちらを見下ろしたまま「部屋……?」と首を傾げた。ラビも、よくは分からなかったから説明出来ず「うん、廊下と部屋があった」と口にして、同じように首を捻っていた。

 ユリシスが、愛想のない美麗な顔を向けて「無事で何よりですが」と小さく息を吐いて、ノエルの方へ視線を移した。ヴァン達が彼を取り囲んで、漆黒の毛並みの胸元から覗く立派な首飾りを、しげしげと見つめる。

「なんか、急に上品な犬みたいになってんなぁ」
『俺は犬じゃねぇ、狼だっつてんだろうが煙草野郎』

 予想していたんだと言わんばかりに、ノエルが仏頂面で言い切った。

 セドリックが、改めて状況を確認するべく、部下達の間から進み出て、少し腰を屈めてノエルの胸元の宝石に目を留めた。そばにユルシスが立ち、同じようにしてそこを見つめる。
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