男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
「ノエル、これが例の『宝』の術具なんですか?」
『そうだ。上手い具合に使えば、こうして実体化して姿を見せられる』

 こんな感じだな、と彼が言った直後に、セドリックが「あ、消えた」と口にした。ユリシスが「ふむ」と秀麗な片眉を引き上げて、ジン達が手品でも見せられたかのように目を丸くして驚きを口にする。

 ラビは、ノエルの姿が見え続けていたので、やはりオンとオフの違いが分からなくて「そこにいるんだけどな」と呟いてしまった。

『術具に宿っている魔力は、無限じゃない。状況に応じて使うつもりだ』

 そう説明しながら、ノエルは再び姿を見せたようだった。話の途中で、テトとジンが目を見開いて「おぉ~」と素直な感想の声をこぼし、サーバルが「実に不思議だなぁ」とのんびり言った。

 様子を見守っていたヴァンが、腰に片方の手をあてて口を開いた。

「まぁ見えるようになるってのは、有り難いよな。声だけだと、どっちにいるのか自信がねぇし。それにしても、チビ獣師がいつもこんな風に『きちんと見えてる』ってのも、不思議だよな」
< 359 / 398 >

この作品をシェア

pagetop