男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 気難しい言い回しをする兄の台詞を聞いたセドリックが、ようやくといった様子で察したように「とんでもない人ですね」と前髪をかき上げた。

「つまり貴方は、たったそれだけの情報から疑問を抱き、ラビの様子を見ていたというんですか?」

 普通なら、その可能性について考える発想すらないだろう。王宮騎士団の最強総団長という一面を知るセドリックやユリシスからすると、まさか当時のルーファスがそのように解釈し、察知し、今でもずっとそれを疑わず念頭に置き続けていたという時点で驚きを隠せない。

 ラビも、当時を思い返して戸惑ってしまった。話したら消えてしまいそうな『他の誰にも見えない秘密の友達』とはいえ、ノエルの存在を自分から否定するような言葉を発するのも怖くて、一度だけ、そうルーファスに答えた覚えはある。とはいえ、まさか、それを信じて身を引いたなんて思ってもいなかった。

 そんな一同の視線を受け止めたルーファスが、ふっと微笑を解いて、質問を投げてきた弟に目を向けた。
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