男装獣師と妖獣ノエル 2~このたび第三騎士団の専属獣師になりました~
 やばい、オレよりも理解している感がすごい。

 ラビは切れ者の幼馴染を前に、右にも左にも動けずにいた。ノエルが言っていた『妖獣』が当たり前のように生活の中に存在していた時代が、まさか文献にも少し残っているとは思ってもいなかったのだ。

 すると、セドリックが「兄さん」と慎重に口を開いた。

「それでは、あなたはラオルテの町で起こった事についても――」
「今のところ事実と結果のみだ。一般人は襲撃現場から避難していたから、『一際大きな獣の咆哮』の他、お前たちの戦いをハッキリ記録した者もいない」

 ルーファスは、弟からの問い掛けをスッパリと切り捨てた。ぐるぐると考えているラビに視線を向けると、その眼差しから威圧感を解いて、気遣い宥めるような微笑を浮かべる。

「だから存在しているのであれば、母上に見せた時と同じように、私の目の前にも姿を現して欲しいと思っているんだよ。君の『相棒』は、今もここにいるんだろう?」

 そう言って、彼がラビの周りへそっと目をやる。
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