一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



紗羽は匡と連絡がとれないのが不安でたまらないというのに、翔はあっけらかんとしたままだ。
匡に殴られたことはどうでもいいのか、九月になるとさっさとニューヨークに帰ってしまった。

せめてあの日はなにもなかったと匡にきちんと話して欲しかったのだが、
「そんなこと言ったら、セックスしたって認めたことになるよ」と笑っていたくらいだ。

(じゃあ、私はどうすればいいの?)

三船には匡に誤解されている事情を話してみたが、ピンとこないようだ。

「まさか、そんなことで匡さんが手を上げるなんて……他になにか事情があったのでは?」

そう言いながら何日経っても匡は帰ってこないし、話しをしようにも連絡がつかない。
三船も日ごとに不安げな顔をみせるようになってきた。

「私がお出かけになるのをしっかりお止めしていれば……」

自分の責任だと思いつめているのを見て、紗羽はとうとう匡の会社を訪ねてみることにした。

(会って話せばわかってくれるはず)

そう思っていたが、ベイエリアにある大きなモリスエ・エレクトロニクスビルの前まで来ると足がすくむ。
だが、なんとか誤解を解かなければと気持ちを奮い立たせて受付まで真っ直ぐに歩く。

受付カウンターの前に立って、紗羽は迷った。

(社長の妻がいきなり会社を訪ねるのはおかしいのではないかしら)

結局、秘書の山根を呼んでもらうことにした。


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