一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
なぜこうなってしまったのか、山根にはわからないことばかりだ。
ただ、狂ってしまった歯車は元に戻ることはないのだと思い始めていた。
「お急ぎください、社長」
「ああ、わかった」
窓から遠くの空をじっと見ていた匡は、会議室へ足を向けた。
部下たちに任せてもなんの支障もない仕事だ。
カナダの会社から誰が来日しているのか気にもとめず、顔を出すだけのつもりで会議室に入った。
社長室のすぐ下の階にある広い部屋には、トロントに本社を置く電子機器製造受託サービスの会社のメンバーが席に着いていた。
営業やシステム管理、そして各国の工場を統括している部署の代表だ。
それぞれの側にはサブや秘書、通訳などが座っているし、匡の部下も含めると結構な人数が会議室には集まっている。
「ようこそお越しくださいました」
さっきとは別人のような表情に変わった匡が挨拶を始める。
キリっとした顔つきに、室内の空気が一瞬で引き締まった。
歓迎の気持ちを込めた彼の話しぶりに会議室は和やかな雰囲気に変わり、次々に議題が進行していった。