一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
(紗羽が離婚の書類を自分で持ってきたということは、やはり別れる意思は固いのか……)
匡は昨夜から、そのことばかりを考えていたのだ。
そして今、匡の目の前に雰囲気が少し変わっているが前よりも綺麗になった紗羽がいる。
彼女の姿を目にしたとたん衝撃を受けたが、なんとか平静を装った。
だが気を緩めると、思わずため息をつきそうになる。
匡はずっと『紗羽の方からやり直したいと言ってくる』と思い込んでいた。
紗羽が頼れる人間は自分だけだと思い上がっていたのだ。
(甘いな、俺も)
紗羽が三年前の匡の仕打ちをあっさり許してくれると思っていたなんて、単純だった自分を呪いたくなってくる。
清水に聞いてもゆかりに頼んでも居場所が掴めなかった紗羽。
その紗羽が突然現れた。
しかも提携するカナダの会社に勤めていたとは想像すらしたことがない。
(カナダに……トロントにいたのか)
紗羽は日本にいるとばかり思っていた匡は、ぐっと奥歯を噛みしめた。
(これがビジネスなら、完全に裏をかかれていたわけだ)