一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
紗羽の行動を読めなかった自分が情けなくもあったが、いい意味で裏切られた気がして表情が緩みそうになる。
(さすが、紗羽だな)
賢くて優美な姿。以前にも増して清廉な雰囲気。
カナダで働くという選択は、とても勇気が必要だっただろう。
紗羽が堂々とブラウン部長の側にいるのは、努力と成功の証に思えた。
匡は紗羽と同じ部屋にいるだけで気分が高揚して、集中力が途切れそうになる。
(こっちも負けずに仕事をしよう)
だが、部下たちの話を聞きながらも視線が紗羽に向かう。
体格のいいブラウン部長に重なっていて、紗羽の姿をはっきりと捉えることは出来なかった。
時間の流れがゆっくりすぎて、どうにも腹立たしい。
(なんとか話をして、離婚だけは避けたい)
紗羽と話す時間を作ろうと頭の中で予定を考える。
(今日のスケジュールはどうなっていたか……)
重要な点はすでに合意しているから、今日の会議は調印前の顔合わせのようなものだ。
どちらかといえば、明後日から予定されている台湾の工場見学の方がウエイトが高い。
匡も台湾に同行することになっている。
タイトなスケジュールの中で紗羽ときちんと話さなければならないと思うと、ますます焦りを感じていた。