一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
午後四時半に会議は終了した。
予定通りに話し合いは進んだので、匡はホッとした。
このあと六時半から一行を歓迎するレセプションパーティーが都内のホテルで開かれる。
匡はその時こそチャンスだと思った。
どんなに気になっていても、仕事中に相手の秘書に話しかけるなど社長であってもできないからだ。
ブラウン部長と真剣な顔で話しながら会議室を出ていく紗羽を黙って見つめた。
相変わらず華奢な後姿だが、見事にスーツを着こなしている。
大学の入学式の日、慣れない黒いスーツを着て階段を降りてきた紗羽の姿が思い出された。
(あの笑顔はもう見られないのか……)
自分に向けられていた屈託のない笑顔。
それを失ってしまって、もう三年になる。
会議の間、紗羽が匡に視線を向けることは一度もなかった。
***
パーティーは、来日した一行が宿泊している赤坂に近い日本庭園があるホテルで開かれた。
紗羽もこのホテルの一室を与えられているので、シンプルなハイネックのドレスに着替えた。
深みのあるブルーのノースリーブのドレスで、紗羽のスレンダーな体にはピッタリだ。
上司の部屋へ誘いに行くと、メアリー・ブラウン部長は黒のドレス姿でネックレスを手にして紗羽を待っていた。
「スズハ、待っていたわ。ネックレスをお願いできる?」
「はい」