一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


留め金がかからなくて困っていたらしく、紗羽がボリューミーなネックレスを受け取って後ろに回る。
かなり高価なものと思われて紗羽も緊張したが、カチリと留めた。

「ありがとう」

大粒のパールで作られた二連のネックレスは部長によく似合っている。

「素敵ですね」
「主人からのプレゼントなのよ」
「趣味のいいかたなんですね。仲がよくって羨ましいです」

ホームパーティーに招かれたときの、メアリーの夫を思い浮かべる。
子煩悩で控えめな笑顔が素敵なエンジニアだ。

「あら、そう見える? 私たちしょっちゅうケンカしているのよ」
「え? そうなんですか?」

仲睦まじい姿しか見たことがなかったので、思わず聞き返してしまった。

「学生時代からの付き合いだから、ワガママなの。お互いに」
「そんなふうには見えませんが」

「それはね、不満がある時はガマンしない決まりにしているからよ」
「決まりとは?」
「言いたいことはきちんと話し合う約束なのよ。ため込んじゃうと爆発するから」
「それでケンカに?」

「そうなの。普段から小出しにしておくと長続きするわよ、夫婦って」

メアリーは『長続き』という言葉に表情を変えた紗羽を見て、クスリと笑った。

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