一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「そんなことを⁉」
「つまらない感情さ。君を他の男にとられるんじゃないかって気が気じゃなかった。翔にすら嫉妬してしまったんだ」
「どうして? 私はあなたと結婚していたのに」

結婚式で愛を誓ったではないかと言い返したかった。
それより先に、匡が罪を告白するように言葉を続ける。

「すまなかった。嫉妬と独占欲で周りが見えなくなってしまった」
「匡さん……」
「君を愛し過ぎていたからだと言ったら、過去の過ちを許してもらえるだろうか」

匡から告白されて、紗羽は落ち着かない気分になってきた。

「どうして、今なの?」
「今も、君を愛しているから」

「愛? でも、あなたは私を信じてくれなかった」

結婚式で誓った言葉だが、誤解された日から紗羽にとっての愛は虚しい響きになっていた。
今になって、まさか匡から聞かされるとは思っていなかった。

「私は、あなたに見放されたと思っていました」

「見放すなんて! ずっと探していた……何度も神戸の清水さんに会いに行ったんだが、断られてばかりだったんだ。余程お怒りだったんだろう」
「私が、誰にも言わないでってお願いしていたから」

「そうか……清水夫妻からはずいぶん叱られたよ。君が自由に生きるのを邪魔するなと釘をさされてしまった」
「え?」

紗羽はあの穏やかな夫妻が匡を諫めたと聞いて驚いた。
匡に誤解されてボロボロだった紗羽を見ているから、怒りの矛先が匡に向いてしまったのだろう。



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