一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
苦しそうな表情のまま、匡がこれまでのことを話し始めた。
「それに……清水さんの息子さん、健先生が会社まで来てくれたんだ」
「モリスエ・エレクトロニクスへ?」
「ああ。君からは話さないでくれって言われていたらしいが、軽井沢で君が飲んでしまった薬のことを説明してくださったよ。強い眠気を引きおこす薬だったと」
「そうでしたか……」
「納得できた。あの時の君は、ベッドの中でぼんやりとしたままだったから」
説明を受けて真実がわかったからといって、三年前に信じてもらえなかった事実は変えられない。
「実は、翔からも電話があった。山根から紗羽が屋敷から出ていたことを聞いてパニックになってた」
「翔さんが? あの頃、何度もあなたに説明してって頼んだのに笑って相手にしてくれなかったのに……」
「アイツにとっては、軽井沢のことはどうでもいいくらい些細なことだったらしい」
「そんな……私は……」
匡からの連絡が絶たれてしまい、翔に説明をしてほしいと何度頼んだことか。
「君に申し訳なかったと言っていた。アイツなりの情報網で君を探してくれていたんだ。もしかしたらアメリカのどこかにいるんじゃないかってね。まさかカナダにいたとは考えもしなかったよ」
一度にたくさんのことを聞かされて紗羽は混乱した。
これ以上彼の言葉を聞いていたら、この三年間の怒りも悲しみもどこかへ行ってしまいそうだ。
「紗羽、君が姿を消してからよくわかった。君がどれだけ大切だったか……」
匡はさらに言葉を続けようとしたが、黙って聞いていた紗羽の体が小刻みに震え始める。