一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
あっと紗羽の震えに気がついた匡は自分のジャケットを脱いで羽織らせる。
「すまない、気がつかなかった。ドレスのままじゃ冷えるだろうからホテルに戻ろう」
寒いからだけではない、あまりに緊張し過ぎたせいもあったが紗羽は黙って彼にされるままになっていた。
上着をきゅっと胸の前に引き寄せて両手で握りしめたので、少し皺になるかもしれない。
彼の香りがふいに鼻腔をくすぐった。上着を羽織っただけで、まるで抱きしめられているような温かさだ。
匡が紗羽の前に立ってゆっくりと歩き始める。
匡が紗羽に歩調を合わせながら、ポツリポツリと心情を吐露してくる。
「毎日が砂の上を歩いているようだった。乾いて、重くて、飢えて……」
紗羽は返す言葉が浮かんでこない。
「生きている意味が感じられなかった」
「匡さん」
「初めて会った日からずっと、君が側にいることを願っていたから。側にいるのが当たり前だと思っていたから」
匡が立ち止まったので、紗羽も少し後ろで歩くのをやめた。
匡が振り向いて紗羽に真っすぐ視線を向けてくる。
「久しぶりに会って驚いた。綺麗になったな、紗羽」
彼の視線を受けて、頬が熱くなる。
匡がゆっくりと腕を伸ばして、そっと紗羽の熱を持った頬に触れた。
「自由に羽ばたいた君は、前よりもっと魅力的だ」
「そんなこと、ないわ……」
紗羽の言葉は掠れてしまう。匡から向けられる視線がさっきより熱を持っているのが伝わってきたのだ。
「君を愛している」
紗羽は頷きそうになってしまった。あの辛かった日々を忘れそうなくらい嬉しい言葉だ。