一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「君も、キスに応えてくれた。同じ気持ちだと信じたい」
見つめ合っていると、また彼の顔が近づいてくる気がした。
だが匡はさっきのようなキスはしてこなかった。
「やり直すのではなく、もう一度最初から君と始めたいと思う」
ぐっと思い留まったらしく、匡は紗羽の頬にあてていた手を下して握りしめている。
「私たち、振り出しに戻るという意味ですか?」
結婚を振り出しに戻すということは、やはり離婚するということかと紗羽は思ってしまう。
「新しい、対等な関係で始めたいんだ。夫婦として、お互いをもっと知っていきたい」
「対等な関係……」
「君の人生を守るだけでなく、ふたり一緒にこれから先を生きていきたい」
彼の言葉に紗羽は目の前がパアっと開けた気がした。
自分が望んでいた通りの言葉だとわかったのだが、素直に頷けない。
(でも、もしまた信じてもらえないことがあったら……)
答えられずに黙り込んだ紗羽に、匡は言葉を続けた。
「明後日から台湾に行くが、君もか?」
「いえ、私はお休みをいただいたので両親のお墓参りをしようと思っています」
久しぶりの日本だから、まず両親のお墓参りがしたい。
匡にも紗羽の気持ちが伝わったのか頷いていた。
「四日後、台湾から帰ってきたら返事を聞かせてくれ」
匡はそれ以上なにも言わなかった。上着を紗羽に預けたまま、匡は足早に庭園から去っていった。