一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「ゴメン。それなのに、連絡がないのを責めちゃって……それどころじゃない毎日だったんだ」
三年前、匡に誤解されてからは必死だった。
誤解を解きたかったし、信じてもらいたかった。でも、スキャンダル記事のせいで諦めてしまった。
半年、一年と時間が経つと、信じてくれなかった匡に怒りさえ湧いてきたくらいだ。
「カナダに行って、よかった?」
ゆかりが話題を変えてくれたので、少し気持ちが軽くなる。
「うん」
あのまま日本にいたら、きっと紗羽はダメになっていただろうと思っている。
誰も信じられなくなって、人との交流を避けて孤独な日々を過ごしていたはずだ。
気付けばすっかりグラスのコーヒーは飲み干していて、氷も解けてしまっていた。
常連のゆかりの顔で長居できるカフェらしく、お茶のあとはランチを頼んでふたりは話し続ける。
「トロントの仕事も楽しそうだし……あとは、匡さんとのことだけか」
「彼を信じたいけど、なんだか怖くて……」
「わかるよ。紗羽にとって、初めて好きになった人だったもんね」
塾でゆかりと話した日が懐かしい。
『好きだなって相手を想う気持ちは、紗羽の自由だ』と言ってくれたのはゆかりだった。