一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「今は?」
「今?」
「今、この瞬間だって彼のことが好きなんでしょ?」
ゆかりに見つめられながら、紗羽は自分の心に問い直す。
初めて会った日に優しい言葉を掛けられた時からすべては始まった。
同じ屋敷に暮らすようになって、彼の仕事への情熱も周りへの心配りもずっと近くで見てきた。
なにより紗羽を大切にしてくれた愛情は本物だったはずだ。
「好き、匡さんが好き……」
紗羽の口から無意識のうちにポロリと言葉が零れた。
「なら、答えはひとつ。もう一度チャレンジだね」
ハッとしてゆかりに問い直す。
「チャレンジ?」
「過去と同じことをやり直すんじゃないの。次のステージにチャレンジするのよ」
「ありがとう、ゆかり。やっぱり私の背中を押してくれるのはゆかりだけだわ!」
えへへと笑いながら、ゆかりが照れくさそうににやけている。
「今日、彼の姿を最初に見た瞬間、紗羽がどう感じるかだよ。自分の気持ちに素直になりなさい!」
「はい!」
十代の頃に戻ったかのような会話に、やっと紗羽の顔にも心からの笑みが浮かんできた。
「私、彼を空港で待つわ」
「うん、それがいい! 結果報告、待ってるからね」
紗羽はゆかりに約束して、カフェを出た。