一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
ゆかりと話せたことで、紗羽の心はすっきりと今日の空のように晴れている。
自分ひとりの心の中ではどれだけ考えてもまとまらなかったのに、ゆかりの言葉で救われた。
(ゆかりに会えてよかった)
もう迷わないと決めると、自然に顔が前を向く。
(匡さんと今度こそ向き合うんだ)
サッと手を上げてタクシーを止めると、羽田へと告げた。
紗羽が第3ターミナルに着くと、ちょうど山根の姿が見えた。
「山根さん!」
以前と同じ黒縁眼鏡の山根が懐かしくて、思わず声を掛けてしまう。
「さ、紗羽さん! どうしてここへ?」
「ご無沙汰してしまって申し訳ありませんでした」
紗羽を見て驚くやら狼狽えるやら、いつもの山根の顔ではない。
「いったいおふたりはどうなってるんですか⁉」
山根は匡からなにも聞いていないというので、紗羽はこれまでの事情をざっと話した。
会社に山根を訪ねたあと、森末家に帰らず清水を頼って神戸へ行った時からのことだ。
今はカナダの会社に就職していること、今回は日本出張のメンバーとして来日したが台湾へは行かなかったことを説明する。
匡とも、今日キチンと話す約束だと伝えた。
紗羽の顔色から、けして悪い話ではないと判断したのか山根はただ頷いていた。