一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「そうでしたか……どうなさっているのか心配していました」
「すみません。ご連絡もしないで」
「いえ、今日お話を聞いて事情はよくわかりました。私はなにもできなかったし、お力にもなれなくて申し訳ありません」

紗羽の説明を聞いて少し辛そうな顔をした山根は、深く頭を下げた。
目上の山根に謝らせてしまったので、紗羽の方が狼狽える。

「そんな、頭をあげてください! 私の思い込みもあったんです」
「それは……おそらく社長もですよね。社長は思い込みの激しいところがありますから」

山根が秘書というより、親戚のコワイおじさん風の表情を見せる。

「……はい」

紗羽が同意すると、ふうっと山根は長いため息をついた。

「はあ……ここ数年の社長のお守りに疲れましたよ。いっきに年を取った気分です」
「お守り?」
「でも、紗羽さんがここにいるってことは、もうお守りから開放されるってことですよね」

「は、はあ……」

よく意味が飲み込めず、紗羽は曖昧に頷いた。

「でも、紗羽さん。とてもいいお顔をされていますよ」
「え?」

「これからは、すべてがうまくいくといいですね!」
「ありがとうございます」

山根も紗羽と以前のように話せたからか、安心したような笑顔を見せてくれた。
紗羽も森末家で暮らしていた頃の幸せを取り戻せたようで、心の中が温かくなってきた。



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