一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


紗羽は、屋敷のことは長く小椋家に勤めてくれている家政婦の三船にすべて任せていた。
ただ同居を始めた異母兄の一家があれこれと注文を付けているようで、三船も戸惑っている様子だった。

「夕食が気に入らない」
「引っ越し荷物を片付けろ」

まだ相続の話し合いすら始まらないうちから孝二たちは傍若無人な振る舞いで、屋敷の中を好きなように使っていた。
三船もゆかりと同じく屋敷の変化を心配しているひとりだ。
一家の横柄な態度に柔軟に対応していたのだが、契約にない仕事を断ったりすると孝二夫婦の機嫌は悪くなる。
すると孝二やその妻の志保は紗羽に対して、言葉の暴力で八つ当たりするのだ。
孝二もだが、葬儀の時はただ大人しく椅子に座っていた志保もたいそう感情の起伏の激しい人だった。

「愛想のないやつだな」
「勉強ばっかりしているから、こんなに可愛くない性格なのね」

ふたりはことあるごとに、紗羽を目の敵にする。



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