一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「財産目当てで親父と結婚した女の娘だから、なに考えているかわからないぞ」
「あら、恐いわね」
孝二は紗羽の母のことまで悪く言うようになっていた。
「本当にお義父さまの娘なのかしら?」
「そう言えば俺や親父とは似てないな」
ふたりの会話はエスカレートしていく。
これまで誰からも言われたことのない暴言を吐かれて、紗羽は傷ついていた。
たしかに紗羽の両親はかなり年齢は離れていた。
父は離婚したあと気ままな独身生活を楽しんでいたらしいが、四十になった頃に大学を卒業して小椋電子の社長秘書になったばかりの母を見初めたらしい。
紗羽から見てもふたりは年の差を感じさせない、とても仲睦まじい夫婦だった。
だが孝二は紗羽の母を嫌っているらしく、軽蔑したような目で紗羽を見る。
父が自分とあまり年の変わらない後妻を迎えたことへの腹いせのようだった。
何度となく三船から『このままでよろしいのですか? どなたかに相談したら』と持ちかけられたが、高校生の紗羽にはどうすることもできない。
小椋家の資産や会社のことはわからないし、父から相続についてはなにも聞かされていなかった。
まだまだ元気だった父は、こんなことになるとは思ってもいなかっただろう。
会社の顧問弁護士や副社長の清水がなんとか防波堤になってくれていたが、未成年の紗羽の代わりに孝二がすべてを決めていくのだ。