一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
暮れも正月も両親の喪中だからなにもしなかったのに、あっという間に過ぎた。
紗羽がようやく高校に通えるようになったのは、三学期に入ってからだ。
久しぶりに教室に入ると、皆が紗羽を遠巻きにしている。
何人かの友人からはお悔やみの声をかけられたが、ほとんどのクラスメイトには無視された。
四月には高校三年生になるから、もうすぐクラス分けのテストがある。
上のクラスに入りたいライバルとしては、家庭の事情を抱えた紗羽に構っていられないというところだろう。
紗羽が大好きだった学校は、しばらく休んでいるうちに居心地の悪い場所になってしまった。
おまけに学校から帰ると紗羽の部屋がなかった。ないというより、移動していたというべきか。
「今日からここがあなたの部屋よ」
なにが起こったのかと唖然とする紗羽に、キッチンの横にある昔は住み込みの女中が使っていた部屋を使えと志保は命じる。
すでに部屋には紗羽の荷物が移されていた。
今は納戸として使っている場所なので薄暗く、古い家具や置物が置かれたままだ。
「あの……これは……」
「家政婦が辞めちゃったから、紗羽さんに家のことをお願いするわ。キッチンに近い方が便利でしょ」
茫然としている紗羽に、ニヤリと笑いながら志保が告げた。
「私、体が弱くてあまり家事ができないの。だから、紗羽さんよろしく」
「あの……家政婦が辞めたって、三船さんが辞めたのですか? どうして?」
紗羽が生まれる前から働いてくれた人だ。
そんな急に小椋家の仕事を辞めるとは思えなかった。
「知らないわ。ここよりお給料のいいところでも見つかったんじゃない?」
「まさか……あの三船さんが?」
にわかには信じられなかった。