一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


あらためて屋敷の中を見渡せば、かつてのような上品で落ち着いた雰囲気は微塵もなかった。
三船がこれまで通りにと頑張ってくれていたが、調度品やカーテンなどは買い替えられて室内はけばけばしい色で溢れている。

(私がぼんやりしているうちに、家の中はこんなことになっていたんだ……)

両親の部屋は孝二夫婦が好き勝手に使っているし、紗羽の部屋は絵美が使い始めたようだ。
紗羽の荷物は教科書や制服、机とベッドくらいしか納戸に移されていない。
衣類は最低限のものが衣装ケースに詰め込まれていた。それ以外はそっくり絵美が使うのだろう。

(どうして?)

紗羽が疑問に思っても、誰に尋ねればいいのかわからない。
紗羽にわかっているのは、自分の味方だった三船がいなくなったことだけ。

寂しいと思う間もなく、毎日がとても忙しくなってしまった。
朝早く起きて、洗濯機を回して朝食の支度をする。
洗濯物を干したら急いで学校に行かないと遅れてしまう。
授業が終わったら友達とお喋りする間も、塾に行く時間もなく帰宅する。
帰る途中で夕飯の買い物もしなければならない。
洗濯物を取り込んで、夕食を作ってからお風呂の準備までが息つく暇もない。
夕食の洗い物まで終わらせてから、やっと勉強だ。
クタクタに疲れ果てて、毎晩倒れるように眠り込む。その繰り返し。


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