一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


慌しい毎日を過ごしているうちにあっという間に春になった。
紗羽はなんとか特別進学クラスに入ることができたが、かなり宿題の量も多くて連日の授業内容もハードだった。

(こんな暮らしをしていて、大学に行けるのだろうか……)

紗羽は不安になってきた。
後見人になった孝二とはほとんど顔を合わせることはないから、家や会社がどうなっているのか尋ねることもできない。
志保は体が弱いと言いながら、毎日どこかへ出かけている。
高校の授業料は銀行口座からの引き落としだから安心だが、大学の費用などはどうなるのか紗羽にはわからない。

(誰に相談すればいいのだろう? 清水さん?)

父が亡くなってから会社のことで忙しいだろうと思うと、つい自分のことを相談するのが憚られた。
親友とはいえ、受験勉強で忙しいゆかりにも相談しにくい。

(どうしたらいいの?)

そんな時、紗羽の脳裏にあの美しい顔が浮かんでくる。
なぜだかわからないが、父の仕事関係というだけなのに紗羽にとって忘れられない人だった。

『……大丈夫?』

その優しい声が、今の紗羽の心の支えになっていた。




< 23 / 154 >

この作品をシェア

pagetop