一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
(今さら、なにを言われても傷つかない)
あの夏の日に誤解されて、匡に対しての思いは粉々に砕け散ったのだ。
紗羽は持参した離婚届の書類を重厚なデスクに置くと、すぐに部屋を出た。
「もうお帰りでございますか?」
「ええ、三船さん。今日は会えて嬉しかったわ」
「ずっと匡さまがこのお屋敷に置いて下さっているんです。紗羽さんが戻ってこられるのを待つようにと……」
「そう……」
「きっと匡さまも紗羽さんのお帰りを待っていらっしゃいます!」
紗羽は三船に微笑んだ。
「私は……家を出たの。彼が三年たっても離婚してくれないだけ」
自分を信じてくれなかった人にどう接すればいいのか、紗羽はまだ答えを見つけられていない。
「紗羽さん、匡さまは……」
三船の言葉を紗羽はそれ以上聞きたくなかった。
彼を忘れたい紗羽とは反対に、きっと三船は愛という虚しい言葉を使うだろう。
紗羽は感謝の気持ちを込めて三船に最高の笑顔を向けた。
「三船さん、ありがとう。長いことお世話になりました。いつまでもお元気でいてくださいね」