一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
スポーツカーに乗っていたのは孝二だった。
交通事故を起こしそうになったからか、狼狽えているようだ。
助手席には義姉ではない濃いメイクをした女性が乗っているのがチラリと見えた。
「危ないじゃないか!」
運転席から降りてきた孝二は、ぶつかりそうになったのが紗羽だとわかると怒鳴ってきた。
「ご、ごめんなさい……」
足首が痛くてよろける紗羽の手を掴むと、孝二は乱暴に引っ張った。
「お前、俺の車だからわざと飛び出したのか!」
「そんな……」
わざわざ車にぶつかりたいなんて思うわけがない。
孝二と揉めていたら、助手席に乗った女性が窓を開けて不機嫌そうに睨んだ。
イライラした口調で声をかけてくる。
「早くしてよ、孝二さん。奥さん留守だから、今のうちに家に寄りたいんでしょ」
「ああ、悪いな。すぐすむから」
掴んでいた紗羽の腕を孝二はぶんと振りほどいた。
「邪魔なんだよ、お前!」
よろけた体を紗羽の捻った足では支えきれず、ぐらりと膝からくずおれてしまった。
「そんな子ほっときなさいよ」
「そうだな。時間がもったいない」
足首を抑えたまま道端にうずくまった紗羽を、孝二がわざと足蹴にしようとした。
俯いている紗羽は気がつかない。
「そこまでだ!」
怒りを含んだ男性の声が紗羽の頭上から聞こえた。