一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「こんな狭い坂道をどうして猛スピードで走るのか、意味がわからない」
クールな声が聞こえたので紗羽が見上げると、背の高い男性が孝二の腕を捻り上げていた。
「は、離せ!」
「彼女をひき殺すところだったんだぞ。しかも蹴ろうとしていた」
凄みのある話し方だ。ふたりの話を聞いている紗羽までがブルっと震えるほどだ。
「そんなことしてませんよ! そいつが飛び出してきたんだ!」
「まだわからないのか」
「いてっ……」
もう一度、孝二の腕を掴む手に力を込めたようだ。
「あ、あの……私、大丈夫ですから……」
孝二が顔を歪めながら紗羽を睨みつけたので、慌てて立ち上がろうとした。
だが、やはり捻った足首に力がはいらずよろめいてしまう。
「足を痛めているな」