一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


背の高い男の人は孝二の腕を離すと、紗羽の体を左手でぐっと支えた。
それから合図するように、右手をサッと上げた。

「すぐ医者に見せるから」
「え? あ、あの、困ります。私、急いでいて……」
「君が行くのは病院だけだ」

音もなくシルバーに輝く高級車が紗羽の横に止まった。

「行くぞ」

後部座席のドアが開いて、紗羽は促されるまま横向きでシートに腰だけ下した。
だが、前を向こうとしたら足が痛んだ。車内に上げようにも動かせない。
紗羽の様子に気がついたのか、その人は紗羽の背中を支え痛む足をそっと車に乗せてくれた。
痛みで思考力がなくなっているせいか、紗羽はされるがままだ。

「すみません」

男の人に足を触られた恥ずかしさもあって、消え入りそうな声で紗羽はお礼を言った。
頬も熱いから、きっと赤くなっているはすだ。
絵里に頼まれた買い物も気になるが、足首はどんどん痛くなる。

「急いでくれ」

すぐに車は動き出した。
紗羽の目の端に、キョトンとしたまま突っ立っている孝二が見えた。


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