一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


おまけにあの急ブレーキ音を思い出すと、匡の苛立ちが高まった。
車と紗羽がぶつかったと思った瞬間、心臓が縮む思いがしたからだ。

倒れ込んだ紗羽を足蹴にしようとしていたのは、新社長になった孝二だとわかると頭に血が上った。
会社の状況を考えたら仕事で忙しいはずなのに、まだ日も暮れないうちからスポーツカーを乗り回している。
しかも、助手席には妻ではない厚化粧の女性を乗せていた。

(想像以上にクズだな)

だが、事故がきっかけで紗羽をこちらに取り込むことができたのだ。

(紗羽をしばらくここに入院させて、その間に決着をつけよう)

ぐっすりと眠る紗羽の顔を見つめながら匡は決めた。
紗羽の安心しきった寝顔を見ていると、さっき見た歯を喰いしばるようにして耐えていた表情が胸をよぎる。
もう二度とあんな顔をさせたくなかった。

匡の行動は早かった。
紗羽が処置を受けている間に、清水が教えてくれていた小椋紗羽の弁護士に連絡を入れた。
今日の事故未遂と孝二が紗羽を痛めつけている映像は車に残っているし、ありとあらゆる状況証拠を集めさせる手配をしたから紗羽を救いだせる。

(救う……?)

不思議な感覚に、匡は戸惑った。

(この少女を、救う?)

紗羽の寝顔を見ているうちに、急に匡は緊張してきた。


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