一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
匡も夏の夜から自分の気持ちを紗羽に伝えるのを先延ばしにするのは止めた。
恩人のひとり娘だから大切にしたかったのが始まりだったが、今は妻に望む愛しい人としか思えない。
世間からは小椋電子を手に入れたための結婚だと思われそうだが、のんびり紗羽が大人になるのを待てなくなったのだ。
次第に大人びて美しくなっていく紗羽が、他の男性を選んで自分の側から離れていくのではないかという不安が先に立つ。
時間を作っては紗羽をデートに誘ったり、小さなプレゼントしたりして彼女の笑顔を見るのが楽しい。
明日はクリスマスイブという日。匡は急にクリスマスツリーをリビングに飾ろうと言いだした。
「今日中に色々届けさせるから、夜に一緒に飾ろう」
「楽しそう!」
無邪気に喜んでいる紗羽を見て、匡も思いついてよかったと胸をなでおろす。
紗羽とツリーを飾ることを隠れ蓑にして、伝えたいことがあったのだ。
森末家のリビングには天井まで届きそうなモミの木が届けられた。
三船はもう自分に与えられている奥の座敷に下がっている時間だからリビングにはふたりきりだ。
クリスタルの雪の結晶や、ローテンブルグ製の天使の人形を紗羽が嬉しそうに飾っていく。
匡はその姿をソファーに座ったまま眺める係だが、ひとつだけ想いを込めた飾りを用意したいた。
「あれ? 匡さん、この赤い箱はなんですか?」
「開けてみて」
紗羽が手のひらに乗るほどの小さなベルベッドの箱を慎重に開けている。