一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「我社とは長いお付き合いでしたからね」

秘書の山根も辛そうだ。彼こそ、匡よりもっと長く小椋社長とは親交があった。
年齢的にも近かったので、小椋社長が軽井沢の別荘に滞在している時には個人的にゴルフに誘われるほど仲がよかったらしい。

「まさか、事故に巻き込まれるとは……」

高速道路の多重衝突事故に巻き込まれた不幸な死が、車中の空気をいっそう重くしていた。

「奥様と別荘で過ごされた帰りだったそうです」

山根が残念そうに呟いた。

そろそろ日が暮れてきた。
太陽が沈むのを背に受けて車は進んでいる。
後部座席から匡が振り向くと、ガラス越しにくっきりと夕陽が見える。
同じ大きさのはずの太陽が、今日はやけに大きく感じた。
秋の澄んだ空気のせいだろうか。
匡は黒いネクタイを結び終えて、ホッと息を吐いた。

「……ニュースで報道された通りか」
「はい。社長御夫妻は搬送先の病院で死亡が確認されました」
「遺されたご家族は?」
「家にいた高校生のお嬢さんはご無事です。大阪の子会社に息子さんもおられると聞いています」
「そうか……」

匡は自分と似た境遇になった娘に思いをはせた。


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