一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「浮いた話のひとつもなかったアニキがどんな人と結婚するかと思っていたんだけど……」
翔はうんうんと頷きながら、じっと紗羽を見つめてくる。
「アニキの趣味って……」
なんとなく森末匡の妻として相応しいかどうか審査されているようで、紗羽は身構えた。
「こ~んなカワイイタイプだったんだ!」
「は?」
「今どき珍しい清純派? いや、もう死語か」
翔は両手の親指と人差し指を四角になるよう組み合わせて紗羽の方に向けている。
様々な角度から見つめられて、絵のモデルにさせられている気分になった。
「あ、あの、匡さんに連絡しないと」
帰国したことを伝えた方がいいと思って、紗羽がスマートフォンを手に取った。
「いや~、絵になるね」
「え?」
「年下のお義姉さんってどんな感じかと想像してたんだけど、いいね!」
「ですから、匡さんに……」
電話しようかメッセージを送ろうかと迷うのだが、翔はマイペースで話が嚙み合わない。
「お、お待たせいたしました」
三船がアイスコーヒーを運んできて、ふたりの前に置く。
「今夜からお過ごしになるお部屋は、以前お使いだったところでよろしいでしょうか?」
翔がここに滞在するだろうと、三船が部屋の確認しようとしたが返事もせずに翔はグラスを持った。
そのままアイスコーヒーにシロップもミルクも入れずに、ごくごくと飲み干す。
喉が渇いていると言ったのは本当のようだ。
「あ、あの……」
「ごちそうさま!」
にっこりと人懐こい笑顔を三船に向けると、サッと翔は立ち上がる。