一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
長い前髪が少しうっとうしいのか、ぐっとかきあげると玄関の方に歩き出した。
「翔さん?」
慌てて紗羽は彼のあとを追いかけた。
「久しぶりの日本だから、当分は友達のところをあちこち回ってくるよ」
「あちこち?」
「アニキによろしく言っておいてね、お義姉さん!」
そういうと、いきなりハグをしてきた。
初対面なのにアメリカ流なのだろうかと紗羽が戸惑っていると、翔は可笑しそうに笑った。
「また来るね!」
ひと言だけ残して、翔はさっさと玄関から出ていこうとする。
紗羽は「どうぞまたいらしてください!」と彼の後ろ姿に声を掛けるのがやっとだった。
三船が慌てて見送ろうと追いかけたが、あっという間に翔は姿を消したらしい。
リビングに戻った紗羽と三船は互いに顔を見合わせた。
「なんだったんでしょうね、あの方?」
「とにかく、匡さんに連絡するわ」
仕事中に申し訳ないと思ったが、紗羽はメッセージだけ送信した。
『アメリカから翔さんが帰っていらっしゃいました。
十分ほど滞在されましたが、すぐにご友人のところに行ってしまわれました。
今日、帰国されるのご存知でしたか?』
返信はなかったが、いつもよりかなり早い時間に匡が慌てた様子で帰ってきた。