一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
匡が心配していたように、その日から翔は突然やって来るようになった。
友達の家に飽きたり時間ができた時に、森末家を訪れては引っかきまわして去っていくのだ。
紗羽の生真面目な性格では、匡に言われた‶適当にあしらう”というのは難しい。
誘われるがまま、美術館巡りをしたり買い物に付き合ったりもした。
「デートみたいだね!」
翔は楽しそうに言うが、紗羽はふたりきりの行動に慣れなくてソワソワしてしまう。
(そういえば、匡さんとはあまりお出かけしたことなかったわ)
匡とは、同居を始めてから人目につくような行動は避けてきた。
紗羽は匡の世間体を気にして目立たないようにしていたし、まさか愛されるなんて思っていなかったからだ。
忙しい匡とは屋敷の中で過ごすことが多く、ふたりで出かけたのも海沿いにある別荘くらいだ。
だから余計に、翔とふたりでいると匡に対して申し訳ない気持ちにさせられる。
いつも落ち着いている匡と違って、翔の自由な振る舞いにも戸惑いを感じるばかりだった。