一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
「いい薬だ。マスコミの洗礼を受けさせよう」
そのまま放っておいて騒がれたら、翔に反省を促すきっかけになるだろう。
画家として名前が売れ始めたばかりだし、モリスエ・エレクトロニクスに傷がつくほどのことはなさそうだ。
匡は紗羽たちに迷惑をかけてる弟に、ちょっと意地悪な気持ちになっていた。
「わかりました。それから……」
「まだ他にもやらかしたか?」
「いえ、別件でございます。以前から取り戻したいとおっしゃっておられた小椋家の軽井沢の別荘ですが……」
紗羽の義兄が作った借金の後始末のために、小椋家の屋敷と軽井沢の別荘は売却していたのだ。
「ああ、あれか」
「購入者が結局持て余して売りに出すようでございます。この五年程、まったく手つかずの状態だと聞いています」
「手を入れてないのか?」
「はい。リフォームもしておりません。もともと投資目的だったのでしょう」
「それなら以前の雰囲気のままだな」
「少し手を入れたらすぐに住める状態だと思われます。いかがいたしましょう?」
「紗羽の名義で買っておこうか。工事の手配もしておいてくれ」
「了解しました」
匡にしてみれば、贈与税など気にもならない。
忙しくて構ってやれない新妻へのプレゼントくらいの軽い気持ちだった。
(ハネムーンの予定はたたないが、時間が出来たらふたりで別荘に行くか)
紗羽との時間をつくるために少しでも仕事を片付けようと、匡はその日も遅くまで働いた。