一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
軽井沢での出来事
紗羽が軽井沢の別荘の話を聞いたのは、夏の暑い盛りだった。
「あの別荘を⁉」
「ああ、取り戻せたんだ。今度の休みにでも出かけてみるか?」
「嬉しいです。でも、かなりお金がかかったんじゃあ……」
「プレゼントしたかったんだ。君はそんなこと気にしなくていい」
あっさり匡は言うが、けして安い買い物ではないことくらい紗羽にもわかる。
「ありがとうございます」
両親との思い出がいっぱいある別荘を匡が購入してくれたのは嬉しい。
でも、素直に喜べない気もする。
『そんなこと気にしなくていい』と言われたが、プレゼントしてもらうには高価すぎる買い物だ。
(私、匡さんに迷惑かけているんじゃないかしら)
妻としてまだまだ未熟なのに、このままでいいのだろうかとふと思う。
紗羽がどんなに頑張っても焦っても年齢の差は縮まらないから、彼にしてみれば頼りない妻だろう。
(大人にならなくちゃ)
それは、年齢だけのことではない。
匡の側にいても恥ずかしくない女性になりたくて、紗羽はお稽古事や英会話のレッスンにいっそう励むようになっていた。