一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



海外へのハネムーンの予定は立たないままだったが、次の匡の休みには軽井沢の別荘に行く約束になった。
やっと夫婦ふたりきりでの小旅行になりそうだ。
紗羽は楽しみにしていたのだが、あいにくアメリカの提携企業からモリスエ・エレクトロニクスを視察する話が急に持ち上がった。
東南アジアの国々を回る予定に日本を加えたらしく、二週間後に来日すると急遽決まったのだ。
二、三日休むどころかますます匡は忙しくなってしまう。

「すまない、紗羽」
「お仕事だから仕方ないわ」

ふたりは慌しく抱き合ったあと、ベッドの中で会話している。
匡の裸の胸が紗羽の目の前にあった。

「すぐに滞在できるように、別荘の内部を大至急で工事しておいたんだが……」

横たわる紗羽の髪をそっと撫でながら、匡は残念そうに呟いた。

「そうでしたか」

紗羽はキュッと唇を結んで黙り込んでしまった。言ってはいけない言葉が口からこぼれそうになったのだ。
大人ならこんなときに『どうしても行きたい』とか、『約束したのに』なんて言わないはずだ。
淋しく思いながらも、紗羽は匡の胸もとから顔をあげて微笑んだ。

「また、時間が出来たら連れて行ってくださいね」

匡がまた紗羽に挑んでくる。
彼の情熱を受け止めながら、紗羽は意識を手離した。



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