一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


それよりも心配なのは、電子部品を作っている会社の方だ。
古くから取引があるだけに、きっちりと関係を再構築しなければならない。
部品の調達が滞ると、自社にも影響が出てくるのだ。

「会社は大丈夫なのか? 部品の供給が途絶えては困る」
「そこは、副社長の清水(しみず)さんがしっかりなさっていますから大丈夫でしょう」

匡もよく知っている温厚そうな清水副社長の顔が浮かんだ。
彼に任せておけば安心できそうだが、油断は大敵だ。

「後継は? 決まっているのか?」
「まだわかりません。清水さんだとよろしいのですが、前妻の息子さんが大阪の子会社の社長ですし……」

山根がプライベートなことになると言葉を濁した。なにか不穏な空気を感じているのかもしれない。

「面倒なことになるかもしれないな。しばらく小椋電子を気にかけておいてくれ」
「わかりました」

やがて車は通夜がおこなわれる大きな葬儀ホールに着き、正面入り口に停車した。



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