一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
紗羽は匡の前では強がってみたものの、一度心に棲みついた淋しさはなかなか消えなかった。
連日のように匡は忙しそうで、このところゆっくり食事をする時間もとれない。
(行きたかったな……)
もう何年も出かけていなかった軽井沢。
(子どもの頃からの思い出が詰まった別荘を取りもどせたのは、匡さんのおかげだけど)
夫の仕事が忙しいくらい我慢しなくちゃいけないと思いながら、どうしても顔に出てしまう。
「それなら僕が連れてってあげるよ」
森末家に遊びに来ていた翔にチョッと愚痴をこぼしてしまったら、いきなり提案された。
「翔さんが?」
「車で行って、別荘を見て、すぐ帰ってくればいいんでしょ?」
翔は軽井沢に行くくらいならすぐに予定がたてられるという。
「ええ、でも」
夫の弟の申し出に、どう答えるのが正解なのか紗羽も戸惑った。
「でもは言いっこなし。高速道路を走れば日帰りできるさ」
軽井沢へのドライブを、とても簡単なことのように翔は請け負ってくれた。