一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



紗羽は匡の前では強がってみたものの、一度心に棲みついた淋しさはなかなか消えなかった。
連日のように匡は忙しそうで、このところゆっくり食事をする時間もとれない。

(行きたかったな……)

もう何年も出かけていなかった軽井沢。

(子どもの頃からの思い出が詰まった別荘を取りもどせたのは、匡さんのおかげだけど)

夫の仕事が忙しいくらい我慢しなくちゃいけないと思いながら、どうしても顔に出てしまう。

「それなら僕が連れてってあげるよ」

森末家に遊びに来ていた翔にチョッと愚痴をこぼしてしまったら、いきなり提案された。

「翔さんが?」
「車で行って、別荘を見て、すぐ帰ってくればいいんでしょ?」

翔は軽井沢に行くくらいならすぐに予定がたてられるという。

「ええ、でも」

夫の弟の申し出に、どう答えるのが正解なのか紗羽も戸惑った。

でも(・・)は言いっこなし。高速道路を走れば日帰りできるさ」

軽井沢へのドライブを、とても簡単なことのように翔は請け負ってくれた。




< 90 / 154 >

この作品をシェア

pagetop