一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「ゴメンね、紗羽さん大丈夫? 久しぶりに日本の道を運転したから楽しくって」
「え、ええ……なんとか……」

高速から一般道に下りてからはスピードを抑えてくれたので、少し楽になってきた。
だが、今度は窓を全開にして車を走らせていた翔がくしゃみを連発し始める。

「夏に花粉アレルギーですか?」
「珍しいでしょ? なんていう草だったかなあ。夏草がダメなんだよ」

話しながら鼻をグズグズさせている。

「お薬は持ってます?」

運転させるのがかわいそうに思えてきたので、紗羽もなんとかしようと声をかけた。

「あ、そこのドラッグストアで買っておくよ。これ以上酷くなると喘息みたいに咳き込むんだ」

大きな店が見えたので、翔は車を駐車場に止めた。

(私も酔い止めのお薬を買って、今のうちに飲んでおこう)

紗羽はむかむかするのを我慢していたが、帰りのことを考えたら心配になってきた。
帰るときも翔の荒っぽい運転で、二時間以上も車に乗るのだ。
ミネラルウォーターと薬を買おうと、紗羽も翔と一緒に車を降りた。

ちょうどその時、紗羽たちの車から少し離れたところにワゴン車が止まった。
スモークガラスに覆われていて中は見えない。
だが車の後部座席の窓が少し開いて、ふたりの姿を狙うように望遠レンズが覗いている。
紗羽も翔も気付いてはいなかった。




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