一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
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紗羽が翔と出かけた日に限って、匡はかなり早い時間に帰宅した。
「まあ匡さま、今日はどうなさったんですか? なにか召し上がりますか?」
お昼を過ぎたばかりだから、食事が必要かと思って三船は慌てた。
「いや、必要ないよ。午後の会議が相手の都合で急に流れたんだ。紗羽は?」
「それが……」
迷いに迷って、三船は匡に事実を告げることにした。
「実は、翔さんと軽井沢へお出かけなんです。匡さまはお忙しいだろうからお伝えしないように言われておりまして」
申し訳ないと思いながら、三船は事情を説明した。
紗羽が思い出の場所へ一日でも早く行きたい気持ちがわかったから、あえて自分も許可したと話した。
翔と一緒なら大丈夫だろうという安心感もあった。
「軽井沢の別荘へ行った? 翔と?」
「はい。懐かしくて行きたくてたまらなかったんだと思います。カギもお持ちですし」
「そうか……」
「止めなくて申し訳ございません」
「いや、そもそも仕事が忙しくて約束を守れなかったから仕方ない」
腕時計を見た匡は迷った。今から車を飛ばしたら二時間もあれば着くだろう。
「紗羽を迎えに行く。もしふたりが入れ違いで屋敷に帰ってきたらすぐに連絡をくれ」
「え? 匡さま、今からですか?」
三船は驚いた顔を見せたが、匡はなにかわからない不安が押し寄せてきたのだ。
このところ忙しさのせいにして紗羽を放っていた自覚はある。
年も近くて明るい性格の翔が、もし紗羽と意気投合したらどうするだろうか。
弟は口も達者だし、手も早い。
女性関係では派手な噂の多い翔が紗羽とふたりきりでいるのが心配になってきた。
(まさかとは思うが……)
匡は愛車に乗って、軽井沢を目指した。