もう遠慮なんかしない

土曜日は9時過ぎに目が覚め、明人さんが来てくれるため簡単な片づけをした。

時間になるとインターフォンが鳴った。

「いらっしゃい。迷わずに来られた?」

「大丈夫だよ。この前マンションの前まで送ったし、部屋番号も聞いていたから時間通りに来ただろ」

「うん。あ、上がって。お茶とコーヒーどちらがいい?」

「コーヒー、もらおうかな」

「これ、前に話していたパン屋さんのサンドイッチ。具材に合わせてパンの種類が違うんだよ。ランチにいいと思って買って来た。食べたがっていただろ」

「嬉しい。話を聞いたころから、食べてみたいって思っていたの。ありがとう」

サンドイッチの入った袋を見せてくれる。受け取ったサンドイッチをテーブルに置き、コーヒーの準備をする。

「ランチを簡単に済ませて、家のこととかやって、夕食は何か一緒に作ろうかと思うんだけど、どう?」

「本当にいいんですか?貴重なお休みなのに私のために時間使って…」

急に後ろから包むように抱きしめられた。

「…会いたかった…」

腰に回された手に自分の手を重ね、振り返る。

「私も…会いたかった…」

そっと、唇が重なった。

彼の手が頬に移動し一度離れた唇が再び重なり、角度を変えて深くなり、私は呼吸がうまくできなくなったところで、彼の胸を押した。

「ごめん。嬉しくて、がっつきすぎだよね」

苦笑いする彼に首を横に振る。

「違うの…息が…苦しくて…。私も嬉しい…」

しばし見つめあったところで、お腹が鳴ってしまい、笑われてしまった。

「お腹すいたね。もうコーヒーも入りそうだし、食べようか」

「朝ごはん食べてなかったから…ごめんなさい」

「その分ゆっくり眠れたんだろ。すぐに食べられるものを買ってきて良かったよ」

せっかくだからといろいろな種類を買ってきてくれたのだそう。二人で半分ずつにして食べたサンドイッチはとても美味しかった。

「このアボカドと生ハムのサンドイッチも、スモークサーモンとクリームチーズのサンドイッチも野菜もパリッとして新鮮。うーん、もおいしー」

食後は久しぶりの会話に盛り上がり、二人で過ごす時間はあっという間に過ぎていく。

「このまま、夜も居てもいいかな?」

そんなことを言われ、心臓がバクバクと今までにない音をたてていた。

何もかもが初めての私に彼はとても優しく触れ、私の不安ごとすべてを受け止め、しっかりと抱いてくれた。
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