もう遠慮なんかしない
私が就職した会社は企業向けのシステム開発やホームページ作成を行い、引き続きそのサポートをしているTAEシステムという比較的新しい会社。
プログラマーとして頑張ってきて、ようやくシステムエンジニアとしての仕事をサポートさせてもらえるようになってきた。
仕事に打ち込んで、それなりに充実した日々を過ごしていたら社会人5年目の27歳になっていた。
ゲームオタクの兄を持つ私は子供の頃からゲームやパソコンでよく遊んでいたこともあり、自然とその仕組みに興味を持つようになった。
だから、あのセミナーに目に興味が湧き受講した。そして、就活で頑張ったかいがあり無事に内定をもらえた時は嬉しさのあまり泣いた。
ちなみに兄はゲーム製作会社に就職し、研究と言っては日夜ゲームをしている。
つい最近も電話が掛かってきたかと思うと
「凛花に聞きたいことがあるんだけど今いいか」
「改まって何?」
「あのさ、女子ってのはどんなセリフに胸キュンってなるんだ?」
「えっ、何それ?」
「今度、乙女ゲームの製作に関わることになってさ。どうにもイメージが出来なくてさ」
「それ私に聞く?今まで彼氏なんていたことないのに。私に聞くより、少女マンガの方がよっぽど参考になるんじゃない?」
アハハと乾いた笑いがこぼれる。
大人になっても兄妹の仲は良い方だと思う。
私にこんな電話を掛けてくるくらいなので、兄も当然独身。
4つ年上なのだけど、彼女を紹介されたことは今のところない。
「凛花ももういい年なんだから、仕事だけじゃなくいろいろ考えたら?まぁ、お前の意見は参考になりそうもないからいいや。完成したら今度のゲームでも遊んでくれよな。そうすれば彼氏の一人や二人できるかもな」
「私はまだまだ仕事一筋です。彼氏とかいたら、自分のしたいことをする時間が減っちゃうもん」
兄同様にオタクの要素が強い私は学生時代は自分の身なりには関心がなく、メイクも服もいい加減なオタク女子で当然彼氏という存在はいたことがない。
社会人になってからはさすがにメイクと服装に気を遣うようになったが、男性から声を掛けられるという経験はいまだにない。
「まぁ、元は悪くないし、見た目は少し変えたら可愛くなったけどな…やっぱり可愛いだけじゃダメなんだよな」
「私を可愛いなんて言うのはお兄ちゃんだけだよ。まったく身内びいきなんだから」
言い返してみたものの、兄の最後の言葉が耳に残ってしまいため息が出た。