もう遠慮なんかしない
2回目の打ち合わせは相澤さんは参加出来なかったので、私一人で行くことになった。
アシスタントとしての慣れない仕事にテンパっている私を笑顔で優しく迎えてくれたのは顧客管理担当の田代さんだった。
「今日は忙しいところ来てくれてありがとうございます。限られた時間の中で少しでも進められるようにしようね」
「はい、よろしくお願いいたします!」
「ずいぶん気合い入ってるね」
今日の打ち合わせは顧客管理担当の田代さんと財務担当者と私の3人で進められる。
「アシスタントの仕事が初めてなので、至らない点がありましたら言ってください。もちろん私で解決出来ないことは社に持ち帰り確認して連絡いたします。なので、今お考えの内容はどんなことでもおっしゃってください」
「こちらもきちんとしたものにしたいから、細かいことも難しいことも言わせてもらうと思います。一緒にやっていきましょう」
そして、田代さんが業務内容を説明してくれ、私は必死に聞き取り記録する。
「今回のシステム開発では、現行使用しているそれぞれのシステムを統合して、それぞれの課で必要なデータをセキュリティ対策をしたうえで活用できるように、というのがメインだから。細かいところは一度フィードバックしてから詰めていきたいね」
「そうすると組織の内容をお聞きして、イメージを早めに固めないと…」
「そう営業一課は仕入先を相手にして、二課は卸先が相手になるんだ。それでそれぞれから集めた顧客データの管理がメインの顧客管理課になっているんだ」
概要の説明からシステム化して社内で統一させたい業務とアクセス権限を付けておきたい業務を振り分けていく。
話を聞いてイメージ出来た部分を説明する。
「この顧客データの部分はパッケージのシステムを活かして、この業績管理と財務管理を関連付け出来ると、そちらのイメージと合いますか?」
「へぇ…さすがだね。ここが繋がってくれると助かるんだよね。今までは別々に作られたものだったから、ここの互換性がなくてさ」
田代さんのふとした時に見せる視線に戸惑ってなのか、今までに感じたことのない疲労が溜まっていた。
「中西さん、今日はこのあたりで打ち合わせは終了にしよう。疲れたでしょ」
私を気遣ってくれる優しさに心が癒される気がしていた。
「はい、少し疲れました」
「下のフロアに休憩できるスペースがあるんだけど、コーヒーでもどう?」
さりげない誘い方に断りかたが分からない私は彼に付いていく。
「どれが好み?ここのは無料だから、どれでも好きなのを選んで」
「無料なんですか?」
「まぁ、うちの会社って食品を扱ってるのもあるからだろうね。来客も社員も無料なんだよ」
二人でお茶を飲みながら、お互いのことを話していた。
彼は営業部から今回のシステム改変のために顧客管理部に異動して1年経ったところで始まったこのプロジェクトに携わることになったのだとか。
おかげで日々の業務とこのプロジェクトで毎日大変なのだそう。
その後、私は連絡担当として田代さんの会社へよく打ち合わせに行くようになり、自然と話せるようになっていた。
それって田代さんの気遣いのおかげかな、と考えるほど彼の存在が大きくなっていた。