【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
「そ、そうだ。村城くんはお弁当必要? 明日からで良ければ作ろうか?」

 恥ずかしさを誤魔化すようにさっき考えていたことを伝えると、村城くんはちょっと驚いた顔をして箸の動きを止めた。

「作ってくれるの?……伊千佳さんが?」
「え? うん。あ、嫌ならいいんだよ」

 嫌がられる可能性を考慮し忘れていたと思って付け加える。
 でも、それは身を乗り出すようにして否定された。

「嫌なわけない!」

 思わずビクッと驚く私にハッとして彼は座り直す。

「伊千佳さんが作ってくれるなら、すっごく嬉しいよ。好きな子の手作り弁当を嫌がる男はいないって」
「そ、そう?」

 またしても口にされた真っ直ぐな好意の言葉に私は少し鼓動が駆け足になるのを感じた。

 それを誤魔化すように、その後は急いで朝ごはんを食べる。


 食べ終えると、村城くんはすぐに家を出て行った。

「一緒に出たら同居してるって学校の人にバレちゃいそうだし、俺先に出るね」

 と言って。


 正直村城くんからそう言ってくれて助かった。

 一緒に登校したら絶対仲の良い友達とかには追及されそうだし、どうしようと思っていたから。


 そこまで考えてハッとする。

「……もしかして、気を使ってくれた?」

 その可能性に、少し胸がキュンとしたのは……気のせいだと思いたい。
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