【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
だから、少なくともキスは嫌じゃなかった。
それなのに「ごめん」なんて言われてモヤモヤする。
そうやってまた思考が巡ってしまう。
そしてそんな状態で料理なんかするから、当然のようにケガをしてしまったんだ。
***
「痛っ!」
「伊千佳さん⁉」
気まずさはあるものの、昼に言っていた通り夕飯の手伝いをしてくれていた村城くん。
私が肉やら野菜やらを切って、村城くんがレタスなどサラダの野菜を洗っているときだった。
玉ねぎをスライスしながらまたモヤモヤを考えてしまって、ごめんって何なのよ⁉ と勢いづいてしまったのが悪かったみたい。
怒りに任せて振るった包丁は少しずれてしまって、野菜を押さえていた左手の人差し指を切ってしまった。
そこそこ深く切ってしまったみたいで、すぐに血が出てくる。
「ぅわ、と、とにかく傷口洗って……」
慌てながらもそう言って洗い場を譲ってくれる村城くん。
流水で洗いながらも血はすぐには止まらなくて私もちょっと焦る、ジンジンする痛みも相まってイライラしてきた。
「これ、止血しないと。ガーゼとか包帯は⁉」
「……大丈夫。傷口は小さいし、止血したら絆創膏で十分」
ワタワタと慌てる村城くんを落ち着かせるように言うと、私はすぐ近くにあったキッチンペーパーを取って指を包む。
そのまま胸より高い位置でギュッと握った。
それなのに「ごめん」なんて言われてモヤモヤする。
そうやってまた思考が巡ってしまう。
そしてそんな状態で料理なんかするから、当然のようにケガをしてしまったんだ。
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「痛っ!」
「伊千佳さん⁉」
気まずさはあるものの、昼に言っていた通り夕飯の手伝いをしてくれていた村城くん。
私が肉やら野菜やらを切って、村城くんがレタスなどサラダの野菜を洗っているときだった。
玉ねぎをスライスしながらまたモヤモヤを考えてしまって、ごめんって何なのよ⁉ と勢いづいてしまったのが悪かったみたい。
怒りに任せて振るった包丁は少しずれてしまって、野菜を押さえていた左手の人差し指を切ってしまった。
そこそこ深く切ってしまったみたいで、すぐに血が出てくる。
「ぅわ、と、とにかく傷口洗って……」
慌てながらもそう言って洗い場を譲ってくれる村城くん。
流水で洗いながらも血はすぐには止まらなくて私もちょっと焦る、ジンジンする痛みも相まってイライラしてきた。
「これ、止血しないと。ガーゼとか包帯は⁉」
「……大丈夫。傷口は小さいし、止血したら絆創膏で十分」
ワタワタと慌てる村城くんを落ち着かせるように言うと、私はすぐ近くにあったキッチンペーパーを取って指を包む。
そのまま胸より高い位置でギュッと握った。