【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
 村城くん……あなたはどうして私を好きになってくれたの?

 すぐにでも質問したいのに、村城くんが与えてくれる熱にドキドキが止まらなくて……頭の芯がとても熱くなって……。

 キスの最中には聞くことが出来なかった。



 かといって、キス以外のときに聞けるかと言うとそうでもない。

 だって、雰囲気とかってあるでしょう?


 朝、焼き魚をつつきながら。

「なんで私を好きになったの?」

 なんて、情緒とか色気がない感じはちょっと……。


 そういうわけでタイミングを見計らっていたら、早くも金曜日の夜になってしまっていた。

***

 明日の土曜日は村城くんが連れて行ってくれるという撮影の見学の日だ。

 夜、自分の部屋で明日は何を着て行こうかと選んでいるとお父さんから電話がきた。


『どうだ? 唯人くんとはうまくやれてるか?』

 接待やらなにやらでお酒が入ることも多く、今の今まで連絡が出来なかったことを謝られてからのその言葉。

「うん、まあ、村城くん優しいからね」

 キスされたなんて言えるわけがないから、無難な答えを選ぶ。

 実際迫られている以外は優しいし、同居生活に問題はなかった。


『そうか、良かった。……大丈夫だろうとは言ったものの、気が合わないってこともあるかと思ってちょっと気になっていたんだ』

 そう安堵の息をついた様子のお父さんは続けて話す。
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