【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
「その……静かすぎて眠れなくて……。それに、何だか寂しくて……もうちょっと、一緒にいていい?」

「……」

「あ、無理にとは言わないよ?」

 すぐには返事がなくて、迷惑だったかなと思い付け加える。


「いや、大丈夫。俺もちょっと寂しいと思ってたから」

 同じことを思っていたと知って安心すると、村城くんの表情がちょっと意地悪なものに変わる。
 色気や妖しさも漂っている様に見えるのは、きっと暗いからだ。
 うん、多分、そうだと思う。

「でも良いの? こんな暗い中俺と二人きりになって。襲っちゃうかもしれないよ?」

「……明るくてもキスしてくるじゃない」

 言い返すと、顔が近付いて来る。

 ちょっと身構えたけれど、その顔は私の耳元に寄せられる。


「キスよりもっとすごいことしちゃうかもしれないよ? ってこと」

 耳にかかる息と、直接響く声にゾクリとした。

 そして言葉の内容にドキリと心臓も跳ねる。


 でも、少し離れて意地悪そうな笑みを浮かべた村城くんに私はハッキリと告げる。

「大丈夫だよ。……村城くんは、私が嫌がることはしないもん」

 その言葉に村城くんは目を見開く。
 そして前髪をクシャッと掴んで「まいったな」と呟いた。
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