【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
「……わかった、襲わないように我慢するよ。……入って」

「うん、お邪魔するね」


 村城くんの使っている部屋には彼の荷物と布団があるだけ。

 私は床に座ろうと腰を下ろすと、村城くんに布団の上に座ってと促される。

「俺が床の方に座るから」
「村城くんの布団なんだから、村城くんが座るべきでしょう?」
「いいから」

 問答無用な感じで座らせられ、それならと私は彼の腕を引いた。

「じゃあ二人で布団に座ろう?」
「……伊千佳さんさぁ、俺の理性試してる?」

 不満そうに言いながらも彼は私の隣に座る。

 それに満足した私はスマホのライトを消した。

「って、ここでライト消すの⁉」
「え? だって、充電もったいないし」

 驚く村城くんに私は当然のように返す。

「はぁ……俺理性持つかな……?」

 村城くんは何かぶつぶつ言っていたけれど、私は告白の返事をどう切り出そうかと考えていて聞いていなかった。


「やっぱりライト消すと暗いね。気配?みたいなのは分かるけど、姿は見えないよ」

 とにかく何か話そうと思ってそう言うと、村城くんは「じゃあ」と私の手を探り当て握る。

「こうしてれば、ちゃんといるって分かるよね?」
「う、うん……」

 予期せぬ体温にドキドキと鼓動が一気に早くなる。
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