【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
「村城くん、お布団も準備出来たから髪乾かしたら――え?」

「え? あ……」

 髪を乾かしたらもう寝ようか、と続けるつもりだったのに言葉をつなげれなかった。

 カチッとドライヤーのスイッチを切った彼は村城くんのはずなのに村城くんじゃなかったから。


 ミルクティー色の髪は後ろをスッキリ刈り上げていて、ツーブロックに分けられている上部は完全に乾けばサラサラしてるんだろうなって程色つやが良い。

 整えられた形の良い眉の下には、切れ長だけれど目じりが少し下がっているからか優し気に見える目。

 鼻筋も綺麗に通っていて、ほど良くふっくらした唇にはわずかな色気も感じる。

 顔の輪郭から耳の位置まで完璧なイケメンがそこにいた。


 私は固まったままその見ず知らずの男を見ることしか出来ない。


 え? 誰? 村城くん?
 いやまさか。

 でも村城くんじゃなかったら勝手に家に入ってきた不審者ってことになる。

 あれ? これ叫んだ方がいい案件?


 混乱しつつもそんなことを考えた頃、目の前のイケメンが気まずそうに口を開いた。

「あー……早速バレちゃったな」
「え?」

 その声は聞き覚えのある村城くんのもので……。
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